王子様なんて (ページ30)

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寝室のドアを開けると、可愛らしい大きめのベッドが１つ。
いつもここで寝てるんだよな、なんてさっき振り払ったはずの邪念がまた顔を出す。

服は着替えさせてあげるほどの関係にもなれてないし、そのまま寝かせて、さっさとここから出よう。
でないと、また良からぬことを考えそうだ。

Aをベッドに寝かせて、布団をかけようとしたその時、

Aの腕が、俺の首にまわった。

寝ぼけているのか、起きているのか、
起こさないように寝室の電気をつけなかったため、
その表情は暗くて見えない。

「ぐくが、おとこのこじゃなければよかった。」

そう呟いたAは、そのまま目を閉じる。

ﾁｭｯ

俺の唇に、柔らかい感触と焦点が合わないほど近いAの顔。

何が起きたか理解しようと頭をフル回転させる俺を取り残して、
さっき俺にキスした相手からは、気持ちいいほどの寝息が聞こえる。

混乱する頭を後回しにして、Aの家を後にする。

…どう言う意味だろう。
男じゃなければ良かった？Aは女の子が好きってこと？
でもキスしたってことは、少なくとも恋愛対象として見てくれてるってことじゃ、

………わかんねえ。

この時の俺は、Aが抱えているものに気付くはずもなく、見当違いな想像しかできなかった。