王子様なんて (ページ45)

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手を繋いだままショッピングモールを回って、
年甲斐もなく、ゲームセンターでUFOキャッチャーなんかしてはしゃいじゃって。
明るかった空が色づいきて、月が完全に顔をだす前に帰路につく。

車の中でも手はずっと繋がれていて。

片手で器用にハンドルを操作するグクに、
運転しづらくないかな？と思いはするが、特に口に出さないのは、私が離したくないからで。

いつの間にか車の窓から見える景色が見慣れた街並みになってきて、家が近づいていることを感じる。

………帰りたくないなあ。本当に楽しい1日だった。
昼間からこんな風にデートしたことなんて、片手で数えれるくらいで。
こんな気持ちを思い出させてくれたグクに頭が上がらない。

私の家の駐車場に着くと、グクは車のエンジンを切る。

「今日、付き合ってくれてありがとう。ご飯も映画もその後も全部楽しかった。運転もありがとう。」

『こちらこそ、めちゃくちゃ楽しかった。』

あまり話すと名残惜しくなってしまう。
別れの言葉も早々に、シートベルトを外して、ドアを開けようとしたその時。

ｸﾞｲｯ

空間が急にスローモーションになるような気がした。
全ての動きがゆっくりに感じる。本日もう何度目か分からないぐらいにまた暴れ出す心臓。

腕を引っ張られたことは理解できた。

ﾁｭｯ

だが、後頭部に回されたこの大きな手が、
唇にある柔らかく濡れたこの感触が、ここには2人しかいないはずなのにグクのものだと理解するまでかなりの時間を要した。

唇が離れ、揺れる瞳で私を見つめるグク。

『……今のは覚えておいてね。』