王子様なんて (ページ46)

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………どうやって部屋まで帰ってきたか定かでない。

あの後、グクへの返事もうやむやに、
逃げるようにして車から降り、そのままグクに手を振った。

心を鎮めるためにお風呂に入ったはずなのに、
頭の中を締めるのはさっきのグクとのキス。

覚えておいて、というのは例の私が酔ってキスしたことを言っているのだろう。

……覚えてるよ。なんて言えるはずもなく。
ただ、あの時のキスと、今日のキスは全く違う。
お互いお酒は入っていないし、

何より、キスした後、心臓が爆発しそうで何も言えない私を宥めるかのように私の頭にポン、と手を置いたグク。
その手が微かに震えているような気がしたのだ。

グクも緊張してる、と分かると同時に
愛しさがぶわぁっと込み上げてきて、なんだか泣きそうになった。

この人のことは信じても良いような気がする。
いや、グクがどんな人でも良い。私が信じたいんだ。

やっとスタートに立てた私は、
この後何が起きるかなんて知る由もなく、
グクとのキスを思い出しては余韻に浸っていた。