隣にいたのは (ページ3)

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お家に向かっているであろう最中も、
特にその男の子と何か話す訳ではなかったが、
しっかり握ってくれているその手が心強く、涙はもう止まっていた。

見覚えのある街並みになってきて、
家が見えてくると、家の門から飛び出てくる母の姿。

その姿が見えた瞬間、私は男の子の手を振り切って走り出す。

「……オンマぁぁあ！！！！」

私の声に気付いた母は、私を抱き止め、頭を撫でながらも、

〈もう！！！何やってるの！！あんなに家から出ないでってお話したのに！〉

と、怒りと心配がぶつかりあったような声で私に言う。

『……俺が遊びに誘ってしまいました。すみませんでした。』

口を開いたのは、私でも、母でもなく助けてくれた男の子。

私を庇うかのように発したその言葉に、母は気付いているのかいないのか、一瞬私を見つめた後、

〈……Aと遊んでくれてありがとう。でも、今度から遊ぶ時は、おばさんに一言お話してね？〉

と伝えた。
母が男の子を叱らなくて良かった。

と思うと同時に、勝手に迷子になった私を庇って、怒られるかもしれないのに自分のせいにしたその子のことを、一瞬で好きになっていた。

私の初恋だった。