私 ページ4
あれから“Agust D”の曲をずっと聞いている。
自分でもどうしてかわからないくらい惹かれていた。
SN「最近、何聴いてるの？」
イヤホンをしながら閉店作業をしていたのを見ていたソヌが聞いてきた。
「ん？ Agust Dってアーティスト知ってる？ 最近知ったんだ。」
SN「へぇ〜、Aにしては珍しいセレクトだね。」
「だよね。自分でもそう思う。」
他愛もない話をしていると店の扉が開いた。
MG「すみません、閉店前なのはわかっているんですが、アイスアメリカーノを4つとフルーツスムージー4つ、テイクアウトできますか？」
ぺこぺこしながらすごく申し訳無さそうに入ってこられたお客さん。
こんな時間にたくさんの注文、お使いかな？ すこしかわいそうになってきた…
「大丈夫ですよ。すぐに用意しますから。座ってお待ち下さい。」
私がドリンクを用意している間にゾヌが閉店の札をドアにかけた。
MG「閉店前に対応していただきありがとうございました。前にここのコーヒーを飲んで美味しかったんで、仲間への差し入れにしたかったんです。」
SN「ありがとうございます。うちのバリスタは腕が良くて、コーヒーはもちろん、コーヒーに合うケーキも作れて美味しいですよ。」
「ソヌ！言い過ぎだって！」
バリスタになってからも自分なりに修行や研究をしてきたから味には自信があるけれど…
ソヌの私への評価は甘すぎる…
「お客さん、すみませんね。うちのオーナー身びいきなもんで…」
MG「いえいえ、本当にそうだと思います。もし、つまめる物がまだ残っていればそれもお願いします。」
「シフォンケーキがありますけど、それでもいいですか？」
MG「ありがたいです。あいつら喜ぶだろうな…」
お客さんの笑顔に、”良いお仲間がいるんだなぁ“ってほっこりした気持ちになった。
もう閉店だし、余ったフルーツをたくさん入れたスムージーはスペシャルなものになった。
「おまたせしました。」
MG「ありがとうございます！ また来ますね。」
SN「お待ちしています！」
両手いっぱいに荷物を抱えたお客さんを見送る。
SN「Aのお陰でうちの店のリピーターも増えたよな。」
「ソヌの入れたコーヒーも美味しいからだよ。」
2人で褒め合って、なんだかおかしくて笑ってしまった。
自分の入れたドリンクを美味しいって言ってもらえると本当に嬉しくて…
今日はこのまま、良い気分のまま、夢も見ないで眠れるといいな…
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作者名：はは | 作成日時：2023年8月14日 15時
