episode.25 ページ25
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諦めるしかない、と思った数時間後。
レコーディングを終わらせて夜の22時過ぎ、流石に帰ってるだろうけど、少しの淡い期待を抱いて彼女がいつもいるスタジオに立ち寄れば、少し空いた室内から光が洩れていて覗けばそこにはテーブルに伏せて寝ているスノが居た。
起こさないよう静かに近寄れば勉強していたのか、ノートの上に頬を乗せて小さく寝息を立てながら寝ている。
寝ている姿を見るのは、初めて会った日に見た以来。
幼さがまだ残る彼女の寝顔は綺麗なんだけど何だかやっぱり死んでいるようで、無意識に彼女の頬に手を伸ばせば温かみを感じてちゃんと生きているんだと実感する。
そういえば、あの時殴られたんだっけ。
もう頬の腫れも無くて、切れていた唇もすっかり無くなっている。
＿＿誰かに頼るってこと知らないんだよ。
あの日、泥だらけのスノを抱えて連れてきたセジニヒョンの言葉。
ファンの子を庇って自分が怪我をした、なんて今後アイドルになるのにそんな喧嘩っぱやくて大丈夫なのかこいつ、って正直思った。
でも今、もし同じ状況が起きたとして、僕が近くにいても彼女は頼らないんだろうか。自分で何とかしようとしてしまうんだろうか。
目にかかる前髪をどければ、擽ったかったのか「ふ、」と小さく息を漏らし少し笑みを浮かべる。
「あれ、…これ」
そんな時気付いたテーブルの上のノート。
書いてある文字はよく知る言葉で、ついさっきレコーディングの際も見たものだ。
手に取りページを捲ればビッシリと書かれるその言葉たち。
『ん………、あれ、ジョングクさん…？』
起きたのか目を擦りながら身体を起こし見上げる。
ボーッとこちらを見ていたかと思えば突然立ち上がり、僕の手からノートを奪い取り、それを抱き締めながら目を見開く彼女はなんだか怯えた表情だった。
「え、なに…」
『み、見ました？！！見ましたかこれ…っ』
「見たけど……え、そんなに見ちゃダメだった？」
顔を真っ青にして「どうしよう」と今度は頭を抱え始める彼女が、何に対して困ってるのか全く想像もつかなかった。
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作者名：MOA | 作成日時：2024年3月5日 16時
