episode.26 ページ26
.
私がこのスタジオを使ってるのを知ってからは、忙しいはずなのに何かしら差し入れを持っては現れるようになったジョングクさん。
ダンスの勉強や語学の勉強をするために、彼らから離れていたはずなのに結局離れられないまま。
でも、前までは想像つかなかったほど、ジョングクさんと過ごす時間は楽しくて今日も来るのかな、いつ来るのかな、って思うくらい彼が来るのを楽しみにしている自分が居た。
だから正直油断していた、
いつも来るはずの時間に来なくて、今日はもう来ないだろうと思いコツコツと独学で学んでいた韓国語。
自身の生まれ育った国の言語、日本語も沢山書かれたそのノートをテーブルの上に広げて勉強していたけど、いつの間にかテーブルに伏して眠ってしまっていた。
だから、彼がこの時間に来るなんて思いもしなくて油断していたのだ。
起きると彼の手には先程まで私が勉強していた、日本語と韓国語が書かれたノート。
それを目にした瞬間寝ぼけ眼だった目なんて直ぐに覚めて、飛び起きて彼の手からノートを奪い取っていた。
「え、なに…」
『み、見ました？！！見ましたかこれ…っ』
「見たけど……え、そんなに見ちゃダメだった？」
ばれたばれたばれた、どうしよう。
頭の中でグルグルと回る最悪な考え。
日本から韓国に来てあの事があり、日本人で生まれ育った環境を隠して芸能界でアイドルをする、そう決めた。
だから元々公開する予定だった国籍も、先輩であるバンタンの皆さんにだって言うつもりがなかったんだ。
バレたくない、彼が周りにバラすような人じゃない事はまだ数ヶ月の仲だけど分かってる。それでも彼にだってバレたくないのだ。
『………言わないで、』
余りにも小さな声だったと思う。
ノートを抱き締めながら届くかどうかも分からない小さな声で呟けば、その声は彼にきちんと届いていたようで「何を？」と返される。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 240人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：MOA | 作成日時：2024年3月5日 16時
