episode.35 ページ35
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「お兄さんには、連絡してないの？」
出ると思ってなかった話題に、飲み物を飲もうと伸ばした手を止める。
以前、彼に日本にいる兄の事を少しだけ話したことがある。
小さい頃父母が亡くなった時から親のようにずっと育ててくれた、十個年が離れている兄。
兄と兄の彼女と３人で暮らしていたけど、アイドルになる時言わずに日本を離れ、連絡先も断ったこと。
セジンさんにすら話していなかったのに、彼に話せたのは何故だろうか。
連絡先を経ったその理由までは話していないので、気になる事は話の最中に何度もあっただろう。
それでも、私がポツリポツリと話す私の話を口挟まず最後まで彼は静かに聞いてくれた。
話を最後まで聞いたジョングクさんに言われた言葉、
「Aはその事を後悔しているんじゃないの？」
図星だった。
やっぱり大好きな家族、唯一の血縁、小さい時からずっと育ててくれた兄。
そんな彼に何も言わず、もう連絡をしないと決めた事は中途半端なんかじゃなく、私なりの考えで決めた事だったはずなのに、そんな兄と離れる事を決めたのは酷く今でも後悔している。
でもまだ子供の私には、兄と離れる選択肢しか思い浮かばなかった。
「デビューした今が良いタイミングなんじゃない？」
『…そう、ですよね』
「連絡先消したって言っても日本にいる友達に聞くとかさ、」
『韓国に来るって決めた時、連絡先皆の消したから誰のもないんです』
「はぁ〜、徹底してるなあ」
まるで自分の事のように悩んでくれるジョングクさん。
きっと日本との繋がりをひとつでも残しておいたら、兄に会いたくなってしまうから、帰りたくなってしまうから。
私の為にずっと頑張ってくれた兄にそんな弱音は見せたくなかったから、もしいつか会うならそれこそデビューしたり、何か成し遂げた時が良い、と思っていたんだ。
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作者名：MOA | 作成日時：2024年3月5日 16時
