Snow ButterFly (ページ42)

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少しの沈黙の後、別れ方が別れ方なだけあって久しぶりの再会に、なんて声を掛けていいか分からなくて気まずい空気が流れる。
そんな沈黙を先に壊したのは兄だった。

「元気だった？」

脳内で再生される懐かしい兄の声。
実際にはその声は彼から発されずに目の前に差し出されたのは、そう文字が書かれた携帯の画面。

誰かが周りで聞いているかもしれないから日本語で声をかけないのか、とかそんな予想は直ぐに無くなり嫌な考えが頭に浮かぶ。

携帯の画面から視線を兄に移し、久しぶりに口にする日本語を自分でも分かる震えた声となって絞り出される。

『《お兄ちゃん…、もしかして、声が出ないの、？》』

私と良く似た丸い目を大きくして、少し困ったように眉を下げ笑った後に小さく頷いた。
日本を出るまでは普通に話してたはずだ。

私が韓国に来てからの約三年、何があったというのか。
彼が巻いたマフラーの隙間から覗き見える首にあるまだ新しそうな傷が、なにか関係あるというのか。

『《なんっ…、なんで…っ》』

"《そんな泣きそうな顔しないで》"

伸ばされた手は私の頭の上に置かれ優しく撫でられる。
小さい時、泣き虫だった私をよくこうやって慰めてくれたっけ。

会いたかった兄との再会は予想もしていなかった人に連れられてきて、優しかったあの声で私の名前を呼べなくなっていて、でも姿は以前までの兄と何ら変わりないんだ。

"《A、少し見ない間に大人っぽくなったね》"

頭を撫でながら成長を嬉しんでくれる兄。
そんな笑顔向けられても同じように笑顔を浮べることは難しくて、ただ涙を流さないよう唇を噛み締めることしか出来ない。

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