episode.43 ページ43
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"《Aが俺の元を離れたのは、
ユラ、という名前を見るのは久しぶりで動悸が激しくなるのが自分でも分かる。
兄が見せるその文章。
ユラさんの事に対して、何と返事するのが正しいのか未だに答えが分からなくて、先程同様私は口を噤んだまま。
"《気付いてあげられなくて、ごめん》"
日本にいる頃 、一緒に暮らしていた兄の彼女のユラさん。
私が兄の元を離れたのは確かにユラさんが原因だ。
だけど、それに対して兄が謝る必要なんて一ミリもない。
喋れば涙が溢れてしまいそうで、首を横に振る。
幼い頃親を亡くし、祖父母と暮らしていた私と兄。
兄が大学生になり東京へ上京してしまった後、しばらくして祖父が亡くなり祖母が施設に入ることになり私も兄の元へ行く事となった。
私が東京へ行く頃兄には彼女が居て、その人と同棲をしていた。
その彼女がユラさんだった。
大学に行きながら働き詰めで私の学費や生活費を補ってくれていて、私が働くと言っても「俺が働くから自分の将来の事だけ考えてて」と言ってくれていた兄。
その結果、兄に負担がかかっている事を幼いながらに理解していたが、まだ子供の私には何をする事も出来なくて、何も出来ない自分が嫌で家事だけはするようにしていた。
そうして私が来たせいで兄が働き詰めになり、彼女と過ごす時間が無くなってしまい、ユラさんにとって私は邪魔者でしかなかっただろう。
「あんたなんか居なければ、」
兄が居ない時間にユラさんと過ごす時間が多くて、何度言われたか分からないその言葉。
それも結局自分で生きる力がない無力な自分が悪いのだ、何度もそう思った。
"《A、一緒に日本に帰らない？二人でもう一度家族の時間を過ごそう。》"
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作者名：MOA | 作成日時：2024年3月5日 16時
