episode.6 ページ6
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「《だから、》」
持っていた携帯を思い切り相手に投げつけ、その後の言葉を阻止する。
鈍い音をして地面に落ちた携帯はきっと、壊れてしまっただろう。
「《いてえなあ！！！何すんだクソガキ！！》」
『《貴方みたいな考えの人がいるから！！そういう国の溝が深まったままなんじゃない！！！》』
「《えらそうに！！！》」
ゴッと鈍い音と共に私の後ろに立つ女性の小さな叫び声。
感じた頬の痛みで、殴られたのだと気付く。
その勢いで思い切り地面に転んでしまうと、慌てて女性が私の側へ寄り添い心配の声を上げる。
大声で言い合ってたからか、周りにはいつの間にか人が集まっていて、それに気付いた男性は罰が悪そうに悪態をつき、その場から逃げるように去って行った。
「ごめんなさい…っ、私のせいで貴方が…っ」
涙をポロポロと零しながら何度も謝る女性。
お姉さんが謝ることなんてひとつも無いのに、
＿＿＿＿
殴られた際に擦り切れてしまった口の中には、嫌な鉄の味が広がる。
ズキ、と痛む足元に目を向ければ転んだ拍子に膝を擦りむいてしまったようで、雨で出来た水溜まりに少し血が滲んでいる。
__ああ、ヤバい、
そう思った時にはもう遅くて、ヒュウヒュウ、と漏れる自分の声と共に苦しくなる息、滲んで行く視界。
目の前が真っ白になり、そんな中で頭の中には半年前の光景が先程より強く鮮明に流れ出す。
聞こえるはずのない嫌な笑い声と、痛むはずのない腹部に
心臓が大きく音を立てていく。
遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえる気がする。
嫌な記憶が頭の中で流れるまま、
私の意識はそこで途切れた。
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作者名：MOA | 作成日時：2024年3月5日 16時
